このコーナーでは、ゴルフ界を牽引する世界の名選手や往年の名手が語った珠玉の名言を、隔月で紹介していきます。ゴルフ界を席巻し、名を馳せた名プレイヤーの才能と人間味が感じられる、数々の魅力的な格言。これらの言葉の生まれた背景には、彼らの人格、品性、生き様などが映し出されているようです。その技術、体力、精神力を言葉から紐解いて、ご自身のゴルフ魂に火を灯してみては。
第7回目の「名言こぼれ話」は、ハリー・バードンです。
バードン・グリップ=現在のオーバーラッピング・グリップの創始者。19世紀後半のヨーロッパで、もっともすぐれた天才ゴルファーといわれたが、実は、寝食を惜しんで練習に勤しんだ努力型のゴルファー。当時はクラブやボールの造り、コースのメンテナンス技術も低く、プロでさえ80以上のスコアでも普通であったが、バードンは常に70そこそこで回ったという。1900年の全米オープンでの優勝は、外国人初という快挙であった。
世界中のラフはロングヒッターで溢れている。
―飛距離が出るほど、曲がる確率が高くなることは否定できない。つまり、距離が出るばかりにOBになるリスクも高くなるということである。アイアンショットの1打、アプローチの1打、パッティングの1打も同じ1打であるのに、なぜかドライバーショットだけは飛んだ、飛ばないと目の色が変わる。
イギリスのラフは厳しい。全米オープンや全英オープンでは、ただの飛ばし屋には栄冠を渡さないコースセッティングをする。実際の歴代チャンプを見ると、正確性が持ち味の選手が勝利を得ている。
ロングヒッター、特にアマチュアは飛距離に酔ってその練習ばかりする。逆に飛ばない人は、アプローチなどの技術を磨く。飛ばし屋が大成しない理由はそこにあるのかもしれない。
練習場では自分を満足感でうっとりさせるクラブでなく、トラブルに陥れたクラブを練習すべきだ。
―練習場では、自分の好きなクラブばかり打ち、ナイスショットが出るとガッツポーズさえ出るゴルファーもいる。しかしそれは自己満足以外の何でもなく、スコアメークへの効果は少ない。
ラウンドでは1発のナイスショットより、いかにミスを少なくまとめるのが大事。それなら、得意なクラブを打つのではなく、不得手なクラブをとことん練習して、ミスをいかに少なく、決定的なミスがないように矯正すべきだ、とバードンは諭す。
ゴルフスタイルは、たいていゴルフを始めた最初の1週間でつくられるものだ。
―ゴルフに限らず、何事も最初が肝心。最初に正しい基本を身につけておくと上達は早い。我流で悪いスイングを覚えると、その後熱心に練習すればするほど、俗にいう「下手を固める」ことになってしまう。
ちなみに、人の脳は最初の体験を記憶に強く刻み付けるそうで、はじめの1週間で握ったクラブの太さもその人の基準のグリップの太さになるらしい。のちにクラブを替える時も、デビュー当時のグリップの太さがその人の標準を決めるともいわれる。
最初に正しい基本を習い、間隔を空けずに練習するとなお上達が早い。例えばひと月に7回練習ができるなら、土日に7回行くより、1週間連続で毎日練習したほうが、上手くなる確率は絶対的に高いという。
風を嫌ってはいけない。風こそはこの上もない立派な教師だ。風はゴルファーの長所と欠点をはっきり教えてくれるからだ。
―雨は良くても、風を嫌うゴルファーは多い。現にプロゴルファーでは、雨は集中力を高めてくれると、晴天時よりもスコアがアップしたり、よいプレーをする選手も少なくない。
しかし風は往々にして嫌われる。向かい風や横風はプレーヤーにプレッシャーを与え、風に負けないようにと、ついリキんでしまうものだ。風を理解して、低い弾道や逆らわないようなショットを放てば、自然の力が風と協力してボールを運んでくれるが、概ね逆らうショットを放ってしまうことが多い。
ハリー・バードン Henry William "Harry" Vardon プロフィール
1870年5月9日―1937年3月20日。イギリス・ジャージー島生まれ。
全英オープン優勝6回の最多記録保持者。全米オープン1勝。「モダン・スイングの父」といわれ、右小指を左人差し指に重ねる、オーバーラッピング・グリップを開発。また、オープンスタンス&アップライトスイングを発案・推奨。当時では珍しい高い弾道のアイアンショットが可能になり、スピンをきかせたピタッととまるボールが打てるようになった。近代ゴルフへの道を開いたことを称えて、米ツアーでは年間平均ストローク1位の選手にバードントロフィーが贈られている。