このコーナーでは、ゴルフ界を牽引する世界の名選手や往年の名手が語った珠玉の名言を、隔月で紹介していきます。ゴルフ界を席巻し、名を馳せた名プレイヤーの才能と人間味が感じられる、数々の魅力的な格言。これらの言葉の生まれた背景には、彼らの人格、品性、生き様などが映し出されているようです。その技術、体力、精神力を言葉から紐解いて、ご自身のゴルフ魂に火を灯してみては。
記念すべき第1回目の「名言こぼれ話」は、1960年代からゴルフ界を牽引してきたゴールデン・ベアことジャック・ニクラスです。全英オープンで男子ゴルフ史上4人目の「キャリア・グランドスラム」を達成した彼の偉業を物語る、数ある名言の中から、ほんの一握りをご紹介します。
良いショットを生み出す決定的な要因の5割はショットの計画(イメージ)であって、4割は構え(セットアップ)であり、1割はスイングである。
―ニクラスはショットを打つ前、毎回ショットを成功させているイメージを頭の中で思い描いていたという。打ちたいショットのイメージを鮮明に頭の中で思い描かないで打ったことは、練習を含めて一度もないのだ。スイングがほとんど完成されているニクラスだからこそ出てくる言葉かもしれないが、我々においても、イメージが固まってセットアップが決まると、自ずといいスイングができてショットが成功する確率が上がるようだ。
球を遠くに飛ばすことより、自分をコントロールすることが勝敗に結びつくことを、私はゴルフから学んだ。
―ニクラスの他のことばに「自分自身をコントロールすること、それは激情を抑えることではなく、激情を自分に起こさせない能力。」という哲学的な名言がある。いつでもどんな状況でも、絶えず冷静沈着に、俯瞰から第三者的に自分自身を見るように鍛錬することが身につくスポーツであるといえる。
人は心から楽しめるものにのみベストを尽くせると私は強く信じている。ちっとも楽しくないことに高い能力を発揮するのは至難の業だ。
―ニクラスのプレーを見ると、心から楽しんでいるというより求道的にストイックに突きつめるように感じるが、ニクラスにしてみると高い能力が浮き彫りになってこそ「心から楽しめる」ことなのかもしれない。
スイング中に何も考えないようになれば、それ以上の素晴らしいスイングはないといえよう。
―ゴルフの動きでは瞬間的なものはなく、すべて継続性をもって行うことになる。従ってスイング中にいろんなことに思考を巡らせることができるが、その邪念ともいうべき思いが体中の筋肉に伝わり、悪い結果をもたらしてしまうことになる。練習により体に叩き込まれた感覚こそが頼りになるものであり、それ以外の思考を排除することがいい結果に導くのだ。
勝利の裏側には数えきれない敗退がある。勝利者はひとり、勝利の王座はたったひとつきりなのだ。栄光の影に星の数ほどの涙がある。
―プロの世界では、勝者はひとりきりである。1ストロークの差であっても、勝者と敗者との格差は明確であり、結果は異なってもその他の敗退者は皆、涙を呑むことになるのである。
ジャック・ニクラス Jack Nicklaus プロフィール
1959年19歳でデビューし、62年にプロ入りする。1966年全英オープンで男子ゴルフ史上4人目の「キャリア・グランドスラム」を達成。
1986年マスターズでは最年長優勝記録を樹立。その他にも全豪オープンゴルフは6度の優勝経験を誇る。
2005年65歳でマスターズを引退、全英オープンが引退の場となった。