このコーナーでは、ゴルフ界を牽引する世界の名選手や往年の名手が語った珠玉の名言を、隔月で紹介していきます。ゴルフ界を席巻し、名を馳せた名プレイヤーの才能と人間味が感じられる、数々の魅力的な格言。これらの言葉の生まれた背景には、彼らの人格、品性、生き様などが映し出されているようです。その技術、体力、精神力を言葉から紐解いて、ご自身のゴルフ魂に火を灯してみては。
第4回目の「名言こぼれ話」は、ゴルフ史上最高のボールストライカー、ベン・ホーガンです。
鋭い眼光から「The Hawk (鷹)」、冷静沈着なプレーで人からはアイスマンと呼ばれた彼は、確かなゴルフ技術でライバルを圧倒し、その時代のみでなく史上最高の選手であると評価する声すらあります。ホーガンの技術論をまとめた著書「モダン・ゴルフ」はゴルファーのバイブルとして、もっとも多くのゴルファーに読まれたゴルフの手引書と評価されているといわれます。
プレーは結果によって考えず原因で考えるのが上達の秘訣である。
―ゴルファーなら一度ならず実感することではないだろうか。バーディーが取れたこと自体は嬉しいことに違いないが、どのように取れたかということ。つまり、トップした、いわゆるミスショットが転がってピンに上手く寄り、結果オーライのバーディーだったことを喜ぶか。たとえボギーだったとしても、イメージ通りのショットやパッティングができたときの方を喜ぶか。林に入れてしまった場合、手堅く出してボギーとするか、ムリしてそのままグリーンを狙ったのが失敗と考えるか、原因があって結果となることを踏まえ、次はどう攻めるか戦略を練ることが上達につながる。
私は練習が大好きだった。練習するのが最高の楽しみだった。トーナメントで勝つことや、そのほかの事よりもずっと楽しかった。2日ないし3日ボールを打たなかったのは、ほんの数えるほどしかない。3日も休んでしまうと取り戻すのに1か月から3か月もかかるような気がした。だから毎日練習することが必要だったのだ。
―ホーガンが同時代のゴルファーの中でも、飛びぬけて練習熱心な選手であったことは名高い。人間のゴルフスイングは「不純物にまみれて(in the dirt)」いて、ゆえにたくさんのボールを打って、これを連戦されたものにすることが肝要であると考えていたようだ。ゴルファーではないが、トップアスリートのインタビューでもたびたび聞くが、トップを死守するためには同じことを継続する毎日の鍛錬と、それを続ける人並み以上の精神力とが必須要件であることはこの言葉からも実証されるであろう。
練習以外、ゴルフに上達の道はない。
―ホーガンは練習熱心で、試合で良い成績をおさめてもスイングに悩み、研究を重ね毎回同じようにスイングする方法を身につけたといわれる。著書「モダン・ゴルフ」には正しいスイングは繰り返し同じようにスイングすることができるが、間違ったスイングは、同じようにスイングの繰り返しができないとされている。また正しいスイングで練習すると、体に適度な疲労感が残るだけで、一部が特別に痛くなることはないとも書かれている。腰や手首、ひじなどが痛くなる人は、身体に無理のないスイングとなっていないか、いちどチェックしてみてはいかがでしょうか。
答えは泥沼に埋まっている。それを見つけ出すにはボールを打ち続ける以外にない。
―悩んだ時に答えがすぐに見つかるようでは本当の悩みではない。解決にはボールを打つことしか方法はないというのだ。練習しているうちに悩みが解きかける時もあるが、また翌日にはなくなってしまうのもまたゴルフ。だから打ち続ける以外にはない、なんとストイックなゴルファーだろうか。
ベン・ホーガン Ben Hogan プロフィール
アメリカテキサス州生まれ(1912年8月13日 - 1997年7月25日)。
11歳からキャディをはじめ、19歳でプロゴルファーとなる。約174センチ64キロと、ゴルファーとして必ずしも恵まれた体格ではないものの、稀代のショットメーカーとして伝説的な存在である。本来は左利きでありながら、ゴルフでは右打ちであった。全米オープン4勝、マスターズ2勝、全米プロ2勝、全米オープン1勝のタイトルを持つ。1949年自動車事故に遭い、再起不能といわれながらも奇跡のカムバック。53年には全米・全英両オープン、マスターズと勝利し、年間グランドスラムのチャンスだったが、全米プロには重きを置かず不出場。もし出場していれば大本命だったといわれる。