このコーナーでは、ゴルフ界を牽引する世界の名選手や往年の名手が語った珠玉の名言を、隔月で紹介していきます。ゴルフ界を席巻し、名を馳せた名プレイヤーの才能と人間味が感じられる、数々の魅力的な格言。これらの言葉の生まれた背景には、彼らの人格、品性、生き様などが映し出されているようです。その技術、体力、精神力を言葉から紐解いて、ご自身のゴルフ魂に火を灯してみては。
第3回目の「名言こぼれ話」は、プロゴルファーの地位を確立したウォルター・ヘーゲンです。
「ゴルフ界の英雄」が、生涯をアマチュアとして過ごしたボビー・ジョーンズだとすれば、対するウォルター・ヘーゲンは、「大きな夢や憧れ」という表現がピッタリといえます。プロスポーツ選手として、生涯に100万ドル以上を稼いだ選手は、ヘーゲンが最初であるとも言われます。
彼のエピソードは、いかなる時もウィットとユーモアであふれています。社交的で、あらゆる地位や立場の人からも愛される人物であったゆえに、プレイボーイとしても名を馳せていたようです。彼の天真爛漫で自由奔放とも思える人柄が、女心をくすぐったのでしょうね。
来年だ、来年は勝ってやるさ。
―オシャレにこだわりを持つヘーゲンは、ある年の全英オープンで、上から下まで白づくめの衣装をまとってプレーして、85も叩いてしまう。帰り際にこのひとことを放ったことに対し、ギャラリーはアメリカ人お得意のジョークと、真剣にとらえることもなく笑っていただけだった。 しかし翌年、有言実行、勝ってしまうのである。プロ意識が強かった彼だからこその努力で、プロの威厳を保ったエピソードである。
まぁ、だいたいできるっていうことは分かっていたよ。
―1924年の全米オープンの優勝が決まってひとこと。順調にスコアを縮め、あと2ホールともにパーで上がれば優勝を目の前にして、絶対に左へ打ってはいけないところで左へ打ち込んでしまった。そこから距離もあるグリーン右側は、フェンスでOB。まずパーは無理という状況。にもかかわらず、「大した差はない」といってOBに向かって打ち、難なく2パットのパー。最終ホールも2メートル弱にアプローチを寄せて、パー。優勝してしまった。不可能を可能にするプレーができるのは、プロ中のプロである。
私は1ラウンドに3つか4つのミスをするものと予め覚悟している。それゆえにミスをしてもくさらないのだ。
―レベルの違いこそあれ、ミスはつきもの。失敗したときは謙虚にそれをとらえ、冷静に対処する。 楽観的ともいえるヘーゲンであるが、ネガティブシンキングと上手に付き合うことで、バランスが取れていると見られる言葉である。自分に自信があるからこそ、失敗を受け入れる。ありのままの自分を受け入れられるからこそ、本番に強い精神状態ができるのだろう。
18ホールを完璧にプレーしたことは一度もない。
―ヘーゲンですらこのように言うほど、18ホールのラウンドは自然条件、プレーヤーの当日の体調や精神状態しかり、トラブルや困難を課してくるのである。
ベストをつくして打て。その結果がよければよし、悪ければ忘れよ。
―失敗してしまったことに、いつまでもクヨクヨすべきではない。失敗を受け入れても反省はしないこと。自分ができることに対して、小さな成功を積み上げることで自信を得る。そうすることで、次の成功だけに集中できるようになるのだ。
ウォルター・ヘーゲン Walter Hagen プロフィール
ニューヨーク州生まれ(1892年12月21日 - 1969年10月5日)。
ツアーだけで生計を立てた最初の人で、プロゴルファーの地位を高めたと評価されている。ゴルフの技術は天才的で「ピアニストのタッチと、金庫破りのデリケートさを持った男」と評され、一世を風靡した。全英オープン4回、全米オープン2回、全米プロ5回制覇し、メジャー優勝回数は歴代3位の実績を誇る。
オシャレなスタイリストで、フェアウェイにファッションを持ち込んだ最初のゴルファー。ボビー・ジョーンズとは違う次元で、ゴルフ史に大きくその名を残している。