このコーナーでは、ゴルフ界を牽引する世界の名選手や往年の名手が語った珠玉の名言を、隔月で紹介していきます。ゴルフ界を席巻し、名を馳せた名プレイヤーの才能と人間味が感じられる、数々の魅力的な格言。これらの言葉の生まれた背景には、彼らの人格、品性、生き様などが映し出されているようです。その技術、体力、精神力を言葉から紐解いて、ご自身のゴルフ魂に火を灯してみては。
第6回目の「名言こぼれ話」は、サム・スニードです。
父親が勤務するコースのキャディを務めたことがキッカケでゴルフを覚え、20歳でプロ入りして23歳で米ツアーに参戦します。生まれながらにしてもつ、滑らかな美しいスイングが特長で「ボーン・スウィンガー」といわれ、世界中のゴルファーの羨望の的となります。全米プロで3勝、マスターズで2勝、全英オープンで1勝しているものの、全米オープンは2位どまり。グランドスラマーは逃していますが、PGAツアー通算82勝の記録は未だに破られていません。純朴かつ天真爛漫な性格が、多くのファンに親しまれました。
グリップの握りの強さの理想とは、キャディがクラブを渡すときの握りの感触である。
―グリップの形は目に見えるから具体的に語られるが、にぎりの強さにおいては各々の感覚となるため基準がはっきりしなかったものの、この言葉によって具現性が出てきたのだ。
スニードの言葉ではこのほかに、「小鳥を両手で包み込むくらいの強さ」と表現。つまり、クラブを放り投げる心配がないようにがっちりと握るのではなく、自分が思うよりもっとソフトに握れということだ。
これは、強く握りすぎるとスムーズなスイングができず、クラブを振るときのブレーキになってしまうからである。ボーン・スウィンガーが説く言葉だけに、圧倒的な説得力を持つ。
歌いながら、ハミングしながらスウィングするのさ。
―米国バージニア州の山奥に生まれたスニードは、きこりや山登りで自然と足腰が鍛錬された。100メートル走をすれば、10秒フラットで走る運動神経の持ち主だった。
流麗なスウィングをつくるための秘訣を聞いてみると、「歌いながら、そうだな、ハミングしながら打てばリズミカルに打てるよ。それ以外に考えたことはないなぁ」との答えが返ってきたという。
生まれながらにして、絹のような滑らかなスウィングを持つ天才の言葉である。
ゴルフスウィング中に考えられることは、せいぜいひとつだけ。
―常人は、スウィングする前からスウィング中、そして終わってからも、たくさんの考えが頭の中に渦巻いてしまう。そして、スウィング自体が壊れてしまうのだ。
スニードが説くのは、手首のコックを早く解きすぎないこと、これだけである。
長続きの秘訣は、足で打つこと。
―とかく、スウィングは腕が主体となってしまいがちだが、ボールを飛ばすパワーの源は、足の使用である。重い引き戸を開ける時を考えてみても然り。ひざを曲げて腰を落とし、しっかりと踏ん張ることで腰と足の力で扉を開ける。腕は、扉をつかむことが目的なのである。
ゴルフのスウィングは、足が80%、胴体のねじれと腕が20%というところ。
遠くへ飛ばそうとしなければ、ボールは遠くへ飛ぶ。
―球を遠くへ飛ばすのは、力(パワー)だけでなく、クラブヘッドのスピードであることを理解しよう。クラブヘッドのスピードを増すには、インパクト時の力みをなくさなければならない。遠くへ飛ばそうという欲が力みを呼ぶのである。
サム・スニード Sam Snead プロフィール
1912年5月27日 - 2002年5月23日、米国バージニア州アシュウッド出身。身長180cm、体重86kg。
同じ1912年生まれのベン・ホーガン、バイロン・ネルソンと並ぶ偉大なゴルファーであり、1950年に年間11勝をあげるなど、プロゴルフの歴史に残る数々の記録を残した人である。「サイドサドルスタイル」と呼ばれる、パターを正面に構えボールを押し出すように打つ独特のパッティングフォームが特徴。